平飼い卵だからってニワトリが健康とは限らないよ!~大切なのはまめな飼養管理~

pink 卵のこと

こんにちは。ぽてっちです。
お腹すきました。
卵かけご飯食べたいです。

ところで、自然派食品関連のサイトなどで、

ニワトリをケージでぎゅうぎゅう詰めに飼うなんてかわいそう。
平飼いならニワトリに優しい!
だから皆で平飼い卵を食べましょう!

という売り文句をちょくちょく見かけます。

個人的にはその度に、
おいおい、平飼いだからってニワトリに優しいとは限らないぞ!
と言うのをぐっとこらえています。


いつの時代でもどんな事でも、考え方がある一方向に偏るというのはとても危険なことだと私は思います。
食に関することでも色々ありますよね。

平飼い卵は素晴らしい!ケージ飼育は悪だ!
遺伝子組換え作物は悪だ!nonGMOしか選ぶな!
野菜は有機栽培なら間違いない!化学肥料は悪だ!

なとなど。
でもそれって本当に正しいの?

自分で自信をもって正しい選択をしていると思う根拠がありますか?

大切なのは、いつも本質を見抜くこと。
例え真実がどうであれ、誰かが言っていることをそのまま鵜呑みにするのではなく、普段から正しい知識を吸収しておくことが大切だと私は思います。

置きが長くなってしまいました(^^;)
今日は、平飼いだからって安易に素晴らしい農場だと盲信しないでほしいということを伝えるために、飼料メーカー営業時代に培った経験も活かしながら、その理由や採卵養鶏場の実情などについてお話ししていきます。

そもそもケージ飼い、平飼いって何?

ケージ?平飼い?もしかすると聞いたことのない人もいるかもしれません。
ざっくりいうと、ニワトリの飼育方法の違いです。
順番に解説していきます。

 

ケージ飼育とは

Chicken, Cage

ケージ飼育とは、その名の通りケージの中でニワトリを飼育するスタイルです。
ケージは一部屋あたり2羽ずつだったり10羽ずつだったり、大きさも農場によって違います。

また、種鶏会社が推奨している1羽あたりの飼養面積は、大体450平センチメートルくらい。
感覚的には、iPhone7を5個並べたのと同じくらいの面積だと思ってください。
これを広いと思うか狭いと思うかは人それぞれですが、養鶏場の経営者の方とお仕事してた自分としては、

広さが云々とか言ってたらやってらんないよね
と思う一方、

ペットとしてニワトリ飼うならこれは狭すぎるしかわいそうすぎる…
という2つの思いに揺れています。

写真はウズラの農場ですが、ニワトリの農場もおおまかな造りはほぼ同じです。

ケージは横方向に何十個も並べられていて、縦方向には何段にも積み上げられています。
4段、9段、もっと多いと14段(!)の鶏舎も最近では出てきました。
1鶏舎あたりの飼養羽数は鶏舎の長さとケージの段数によって異なります。
4段なら大体2万羽前後14段だと10万羽(!!)前後です。

それぞれの段の下には糞を回収するベルトと卵を回収するベルトがあります。
ケージは緩い傾斜がついていて、卵を産むと通路側に転がってきます。
転がってきた卵は集卵ベルトの上に乗りGPセンターへ(卵を洗ったりパックに詰める場所)回収されていきます。

鶏の一生について知りたい方は、以前書いたこちらの記事を参照してください。
卵ができるまで~ニワトリはどこから来てどこへ行くの?~

 

平飼いとは

Chicken

平飼いはケージ飼いとは異なり、直接床の上でニワトリを育てます。
生活スタイルはより野生に近いですね。

鶏舎の中には巣箱を用意して、そこで卵を産んでもらいます。
一部床に産んでしまうやつもいますが…。
海外の平飼いをしている養鶏場や国内の一部でも、平飼い専用の集卵ベルトを使用しているところがあるようです。

また、止まり木を用意して、夜はそこに止まって寝てもらいます。

ちなみに、「放し飼い」とは違うのでご注意を。
「放し飼い」は、鶏舎の外(野外)に出られる状態で飼育することです。
昼間は外で過ごし、夜になると皆で鶏舎の中で寝るというスタイル。


平飼いはあくまでも鶏舎の中、「屋内」ということをお忘れなく。

 

平飼いって意外と大変~平飼い卵の裏事情~

写真はイメージ。鶏糞じゃなくて泥です。

ケージ飼いの鶏舎は糞がベルトコンベアーの上へ落ちたら、ボタンを押してベルトを動かせば糞が鶏糞処理機へ運ばれていきます。
しかし、平飼いの場合は定期的に糞掃除をしなければいけません。

こまめに床の糞を掃除していたり、糞の発酵がきちんとできていて床がしっかり乾いている農場であれば、何ら問題なく鶏も鶏舎内を走り回ることができ、健康な状態であると言えます。

しかし、管理がずさんな農場は糞やこぼれた飲水で床がべちゃべちゃ
水分が多すぎると糞の発酵がうまくいかず、アンモニアなどの有害なガスが発生して悪臭が広がります。
それだけでなく、アンモニアなどの大量発生でニワトリも酸欠状態になり、ニワトリの健康状態に悪影響を及ぼします。

ある人から聞いた話ですが、以前「自然農法、平飼い」を謳っている農場を視察しに行った際、まさにさっきお話したような汚い状態だったといいます。

とりあえずめちゃくちゃ汚い。あんなところで飼われるならケージの方がよっぽどまし
と言っていました。

平飼いではないのですが、私も以前エサ屋として働いていたときに、何年も糞掃除をしていない養鶏場に行ったことがあります。
ニワトリはおそらく酸欠状態で、とさかの色が白く変色していました。かわいそうに…

2年しか働いてないのに遭遇したということは、全国的にもそういったずさんな管理をしている養鶏場が一定数あると思いますよ。

 

【補足】床が濡れていると有害ガスが発生するのはなぜ?(科学的根拠を知りたい人は読んでみてね)

鶏糞を発酵させるには、好気性菌(生きていくために空気中の酸素を利用する菌)に活発になってもらう必要があります。
従って糞が乾いているほうが空気が入りやすく、発酵が起こりやすくなります。
一方床の糞に水分が多い状態だと、下の方に空気が入っていく隙がないので、嫌気性菌(酸素のない状態で生育できる菌)が元気になり、アンモニアなどの悪臭を放つガスを大量生産してしまうのです。

もっとも、原因は臭い鶏舎で飼われていニワトリの糞の水分がたまたま多いということではありません。
鶏舎により湿度の多少はありますが、農場の管理がずさんで、ろくに床の糞をどけずに放置しているか、平飼いでのんびり育てましたとは名ばかりで、飼養密度が高すぎるのが根本的な問題でしょう。

 

おわりに

平飼いを随分悪く言った雰囲気になってしまいましたが、あくまでいい加減な飼養管理をしているところについてのお話ですので、きちんとしたところも勿論あると思います。
ただ、そういった背景を考えず、やみくもに「平飼い卵しか飼うな!」みたいな言葉を目にして違和感があったので、今日はこんなお話をさせていただきました。

そしてまた、ケージ飼育をしている養鶏場が全てニワトリに対してひどい扱いをしているとは私は思いません。
確かに飼養面積は小さいですがきちんと衛生管理をしている養鶏場は沢山ありますし、中にはHACCPなどの食品衛生管理システムの認証を取得したところもあります。
というか実際、今の市場ではこうしないと養鶏農家が生きていけないというのが実情です。

ヨーロッパ各国ではケージ飼育を禁止する法律が進んでいます。
日本はアニマルウェルフェアの浸透が遅れてる!」という声も良く聞きますが、日本は国の面積が小さいくせに人は沢山住んでいて、しかも世界的にみて卵がめちゃくちゃ安い国
臭いにも近隣住民がうるさくて、すぐクレームが来る。
しかもまだケージ飼育禁止の法律なんて全然できそうにない。

そうなると、必然的に多くの養鶏場がケージ飼育を継続せざるを得ないと思います。

色々な立場を知ってしまうと、一概に色々批判できなくなるものですね(^_^;)

次回はニワトリ目線だけでなく、平飼い・ケージ飼い卵についての消費者にとってのメリット・デメリットなどについても掘り下げていきたいと思います。

お楽しみに!

コメント

  1. 下村 温 より:

    どうも画像認証が上手く行きませぬ。

    ぽてっち様
    最近は「衛生的」「清潔」の概念を変える必要があると感じております。
    衛生的と清潔を追求して、人間は腸内環境の悪化を招く事になったと思います。
    腸内フローラ移植研究会で分かった事は、意外にもクロストリジウム 属の多様性が人の健康の鍵を握っているというものです。
    乳酸菌が多すぎても、健康的では有りません。
    バランスが大切なんです。

    平飼いは、見た目は汚いでしょうけれども、土壌細菌やら鶏の健全な腸内フローラの供給源になっている可能性があると感じております。
    土壌細菌=クロストリジウム 属やら枯草菌です。

    ただ仰る通り、現在はトリインフルエンザの脅威が有りますので、平飼いには細心の注意が必要です。
    また、平飼いの場合はサルモネラ などの人畜共通の感染症が出た時に、対策が遅れる可能性が有ります。

    確かに免疫力はケージ飼いに比べれば高いかも知れませんが、免疫力で乗り切れる病気とそうで無い病気が有ります。

    免疫力は数値化を試みていますが、完全では有りません。

    ストレスも数値化を試みていますが、慣れてしまうようです。

    本当にストレスを感じていれば、餌も食べないし卵も産まないでしょう。
    ケージに複数の鶏を入れた方が競争心からか飼料を良く食べます。
    意外に快適なのかも知れません。

    規模が1万羽程度でも、多分個体を観察するのが難しくなると思いますので、今の日本では、安全を優先させればケージでの飼育方法となってしまうと思います。

    ところで、アニマルウェルフェアですが、体の良い関税外障壁ですね。

    自国の農業をあれやこれやで保護する天才です。

    ルール作りの天才の国々と人々がいて、一方では目立たない様に未だに植民地を作っていて、同じ国民が一方ではアニマルウェルフェアと曰う。

    オリンピックのルールもいつの間にか自国に有利になってしまう。

    プロバガンダに子供を利用する。

    真面目で優しくて、印象に弱い人たちがアニマルウェルフェアは素晴らしいと共感する。

    EUの思う壺に世界が進んで行く。

    そもそもケージ飼いとかストール飼いはヨーロッパの人たちに習いました。

    ところで、私が担当していた50万羽のレイヤー農場の鶏達は特に不満はなさそうでしたよ。

    彼女らが考えている事は多分、朝から晩まで餌のことだと思います。

    鶏達を擬人化をすれば残酷でしょう。

    しかし、長い間をかけて家畜化をする中で、ストレスと感じる遺伝子は排除されました。

    おかげで人間は、朝から晩まで食べ物の心配をする事なく、卵と肉を得ることができる様になりました。

    余裕ができた時間であれこれ発明をして、今の社会が有ります。

    アニマルウェルフェアは結構だけれども、政治利用されていると気づくべきですね。

    アニマルウェルフェアに取り組まざるを得ない国は輸出国で、輸入国は関係有りません。

    豚を少しだけ香港に輸出していますが、ASFで供給不足に陥っているので、尚更関係無くなって来ています。

    ところで、畜魂祭と言う概念が有るのは日本ぐらいなのでは無いだろうか?

    家畜を擬人化して人間並みに霊に感謝して鎮んで頂く。

    飼っている人が可哀想と考えて鎮魂のお祭りをしているのだから、飼っていない人間が言うべきでは無いでしょう。

    と思います。

    ありがとうございました。

    • ぽてっち より:

      アニマルウェルフェアに対する見解など、コメントありがとうございます。
      免疫力と一言で言っても自然免疫と獲得免疫、免疫系の細胞も様々な種類があるから数値化は難しいでしょうね。
      ニワトリが本当は頭の中で何を考えているのかは、誰にもわかりません。
      だからといってどんな扱いをしても良いとは思いませんし、かといって何でも擬人化して可哀想可哀想と騒ぐのも違う気がします。
      (じゃあ植物や昆虫は可哀想じゃないのかよ、といつも思ってしまいます)
      生きていくのに必要ならば、人間の考えうる最大限の敬意を払っていただくしかないのかな、と私は思っていますが。
      正解がない、答えがないからこそ皆で議論しあっていくべきじゃないかなというのが自分の見解です。

  2. 下村 温 より:

    ぽてっち様
    家畜肉の脂肪酸組成に付いて↓
    オレイン酸が主流と解釈できますが、どうなんでしょうか?
    http://kumamoto.lin.gr.jp/shokuniku/eiyochisiki/tokusei_hataraki/hyo6.html

    ヒドロキシノネナールが最悪とされています。

    https://biz-journal.jp/2015/09/post_11741_2.html

    日本食品油脂学会 奥山先生は、ご著書の中で、もはやキャノーラ油は人の食べ物では無いとまで言ってます。
    理由は、ヒドロキシノネナールとジヒドロ型のビタミンK2、それと未知の毒性因子が有るためとの事です。
    キャノーラ油を妊娠ラットに食べさせると、母ラットのみならず子ラットも短命との事です。
    この実験結果が人にも当てはまるとすると、現在の難病が説明出来ると言う訳です。
    更に私が思うに、卵原細胞への悪影響です。
    家畜には菜種粕を与えたとしても少量かと思います。
    CP、TDN、価格の理由は有るかと思いますが、家畜に対する成長阻害作用はいかがでしょうか?
    http://www.sefofcouncil.net/about/greeting.html

    ご教示、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

    • ぽてっち より:

      下村様
      家畜肉の脂肪酸組成についてですが、一般的なデータはあるものの、
      摂取した飼料による比率の変化についてはなかなかデータがないようなのです。
      飼料によって大幅に組成が変化することはないと思いますが、数%程度の変化で
      風味に影響が出るのではないかなと思っています。
      (大体どこでも食味試験をしておしまいの所が多いのです。。。)
      二点目については、私は業界から退いて何年もたつので詳しいお話については現役の方に聞いてみてください。
      お役に立てず申し訳ないです。

  3. ニャン より:

    ためになりました。ありがとうございます。

    薄利多売という言葉が雅にピったりかなぁ。
    今の方法はって思ってしまいますね。

    田舎のおばあちゃんちでは、子供の頃それこそ
    放し飼いにしていました。虫も食べていただろう
    けど、おばあは90歳。一緒に住んでいる家族も
    皆健康でした。鶏も長生きだったようです。

    それが自然だったと思います。自然に帰る事は
    良い事だし、免疫が付かないと弱い人間になって
    しまう。何故こんなにも猫のアレルギー、食物
    アレルギーが増えている?
    そして不要な化学物質が浸透し、人間はどんどん
    弱くなっている。

    私は自分が病気になったとしても、やっぱり平飼いを
    選びます。鳥の好きな行動をさせないのは、虐待といいます。
    商売だからそれが許せるというのは、人間の勝手。
    また虐待から生まれる商品を食べた方ら心が病みます。

    平飼いでもちゃんとした所を選ぶ。これが大事。
    沢山産む為の餌なのか?美味しい卵を作るための鳥たちの
    餌なのか?も調べて買わないと意味がないと思いました。

    • ぽてっち より:

      ニャンさん、はじめまして。
      コメントありがとうございます。

      現代の日本の鶏卵産業って、おっしゃるとおり大半が薄利多売なんですよね。
      どれだけ安く効率よく生産できるかが重要で、どんどん価格競争に巻き込まれていってしまう。
      これは日本の産業全体にも言えることで、消費者含め皆が変わっていかないと、「ただ安いだけで物は悪い」モノづくりの国になってしまうのではないかなと。

      アレルギーを発症する人が増えている原因ははっきりとは分かっていませんが、昔よりも様々な病原体に接する機会が減っているというのはあるかもしれませんね。

      鶏の卵を人間の都合で頂くという点では、どんな飼い方であっても結局エゴになってしまうのかもしれませんが、苦痛は最小限にしましょうというのがアニマルウェルフェアの考え方ですね。

      おっしゃる通りで、平飼いなら何でも良いとは私は思いません。
      個人的には名前だけの汚い平飼い農場よりも清潔なエンリッチドケージの方がずっと鶏にとって良いと思います。
      採卵鶏のエサもコストや卵重を抑えるため、栄養成分がセーブされていたり摂取量を抑えているところもあります(一概に虐待と騒ぐのは違うと思いますが)。
      エサ、飼養環境、品種様々な観点から消費者が適切に卵を選ぶ知識を身につけていってほしいと思いますし、生産者もそれを自信持って公表出来るような飼育をしていただけたら、と願っています。

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