こんにちは、ぽてっちです。
今日はニワトリをケージで飼育した場合と平飼いで飼育した場合での、ニワトリと消費者それぞれの視点からメリット・デメリット等についてまとめてみました。
平飼い、ケージ飼育の説明については前回の記事でお話ししておりますので、こちら↓をお読みくださいませ。
平飼い卵だからってニワトリが健康とは限らないよ!~大切なのはまめな飼養管理~
ケージ飼育のメリット
ニワトリにとっては…
衛生的
糞をしたらケージの下にある糞ベルトの上に落ちるため、糞が体に触れることがありません。
また、鶏糞は毎日ベルトに乗って回収されるので、ニワトリの足下で病原菌やウイルスが繁殖するリスクが低くなります。
個体管理がしやすい
ケージの中に決められた羽数のニワトリがいるので、毎日観察する時に個体の識別がしやすく、一羽一羽の変化をきちんと把握することができます。
鶏同士のケンカが起こりにくい
農場によりますが、多くの養鶏場が1部屋あたり2羽、あるいは10羽以下で飼育しています。
そのため、何十羽が同じ空間で飼われている状態と比較するとニワトリ同士の争いが起きにくく、他のニワトリにつつかれてケガをしたりすることがあまりありません。
また、エサを食べる時もケンカが起きにくいので、どの個体もきちんとエサを食べることができます。
消費者にとっては…
衛生的な卵が食べられる
基本的に卵に糞がつくことはあまりなく、卵を産んだらその日のうちに集卵ベルトでGPセンターに集められていきます。
GPセンターでは卵の洗浄をし、次亜塩素酸ソーダによる殺菌も行います。
そのため、仮に殻の表面に菌が付着していたとしてもこの過程でほとんどが殺菌されるので、私たち消費者が殻についた菌を口に入れるリスクはほぼゼロに近いと言えるでしょう。
もちろん卵の中にも菌が侵入しないように、ニワトリの管理は厳しく行っている農場がほとんどですよ。
卵を安く買うことができる
ケージを何段も積み上げることで、1つの建物の中で沢山のニワトリを飼うことができます。
従って生産効率が上がり、コストを抑えられることによって私たちは卵を安く買うことができるのです。
ケージ飼育のデメリット
ニワトリにとっては…
ケージが爪や皮膚のケガの元になる
ニワトリは自然界では地面の上を歩いているうちに爪の先が削れていきますが、ケージの中では伸びてしまうことが多く、爪がケージに引っ掛かってケガをしてしまうことがあります。
また、ケージは金属製で、継ぎ目などが尖っているとニワトリの皮膚に引っ掛かってケガをしてしまうこともあります。
消費者にとっては…
罪悪感を感じる
まだ日本では飼育方式によって卵を選ぶ考え方が浸透していないのであまりないかもしれません。
アニマルウェルフェアを重要視しているヨーロッパ諸国では、
「消費者が罪悪感を感じて卵を食べるのが嫌だ!」
という声が多く、ケージ飼育の卵はあまり売れていないようです。
次は平飼いについて。
平飼いのメリット
ニワトリにとっては…
自由に行動できる
ニワトリにとっては広い敷地を好きなだけ飛び回ることができるので、行動が多様化し、より自然界にいる状態と近くなります。
消費者にとっては…
罪悪感が軽減される
ケージ飼育と逆です。
ニワトリを暗く狭い場所に閉じ込めて卵を産ませている、という罪悪感を持つことなく卵をいただくことができます。
これもまだ日本では馴染みのない感覚かもしれませんね。
平飼いのデメリット
ニワトリにとっては…
個体管理がしにくい
1つの鶏舎の中をたくさんのニワトリが毎日飛び回っているので、農場の管理者は一羽一羽の区別がつきにくいです。
もしもケガや病気の兆候が認められても、それに気づけない可能性も当然上がります。
ケンカが起きやすい
ケージ飼育よりもより大きな集団で生活するため、順位が生じる可能性があります。
そうなると、エサを十分に食べられなかったり、皆にいじめられてつつかれ、ケガをするニワトリが出てきます。
十分な飼育スペースとどの個体もまんべんなくエサを食べられる環境づくりが重要になってきます。
ケージ飼育よりも衛生的ではない
糞や食べ残し、飲み水が落ちた床を踏みながら生活するので、糞などで菌が繁殖し、それがニワトリに感染してしまうリスクも上がります。
※2018/11/10追記
指摘をいただいたため追記。
平飼いでもきちんと掃除を行っていれば、衛生状態を保つことができます。
ただ、糞ベルトで自動的に糞が掃除されるケージ飼いよりは清潔に保つのに手間がかかる傾向にあります。
屋外の場合は野生動物に食べられたり疾病に感染しやすい
平飼いの中でも「放し飼い」と呼ばれる屋外で飼育する方式では、野生動物に襲われたり、野鳥との接触により鳥インフルエンザ等の疾病に感染するリスクが更に上がります。
消費者にとっては…
ケージ飼育よりも卵が衛生的でない可能性がある
平飼いではニワトリの本能を利用して、小さな巣箱を用意し、その中に卵を産んでもらうようにします。
しかし、一部巣の外で卵を産んでしまうものもあります。
そうなると、その卵は糞などが落ちている地面の上に接しているので、その後の衛生管理をきちんとしないと、消費者のもとへ細菌に汚染された卵が届いてしまうリスクが高まります。
(その後きちんと消毒していれば良いのですが…)
また、小規模農家の場合、卵の洗浄や消毒が大規模農場に比べると徹底されていないこともあります。
平飼いの養鶏場のほとんどが数百羽、数千羽規模の小規模なので、衛生上好ましくない卵に遭遇する確率がケージ飼育よりも高くなってしまうのではないか、というのが私の予測です。
きちんと衛生管理をしている平飼いの農場がどのくらいの割合で存在するのか、という正確なデータは分かりませんが、少なくとも農場の内部を写真や動画でしっかり公開している農場のほうが安心できそうです。
卵の価格が上がってしまう
1階建ての鶏舎に飼養密度を抑え、少数でニワトリを飼うとコスト的にはどうなるでしょう?
ケージ飼育よりもめちゃくちゃ高くなりますよね。
従って、一般的なケージ飼育の卵の倍以上の価格は覚悟しなければいけません。
卵は安い、という認識の日本人からするとかなり痛い問題だと思います。
日本人の消費者の多くが意識を変えない限り、平飼い卵がメジャーな存在になるのは難しいと思います。
まとめ
☑ケージ飼いは生産効率、衛生管理、ニワトリの健康管理に関しては平飼いよりもメリットが多い
☑平飼いの場合、ニワトリが地面を自由に走り回ることができるという点で、我々も罪悪感を感じないというメリットがあるが、生産コストが非常に高くなってしまうというデメリットがある
☑平飼いは飼養管理機材ではなく手作業による部分が多いため、管理を怠ると衛生面でのリスクが上がってしまう
おわりに
平飼いはこまめに世話をしないと鶏舎がすぐに不衛生な状態になりがちです。
平飼い卵しか食べません!という人もたまに見かけますが、平飼いなら何でも良いわけではありません。
むしろいい加減な平飼い農場よりは、ほぼオートメーション化されていて飼養管理・衛生管理をしっかりしている大手養鶏場の卵のほうが、よっぽど私たちにとって安全だし、ニワトリの健康にも良いと思います。
(そりゃあ衛生的な平飼い卵が動物愛護の観点からはベストなんでしょうけども)
ニワトリをのびのびとした環境で育てました、という聞こえの良い言葉だけに惑わされないでくださいね。
ちなみに今回の記事は、農林水産省のアニマルウェルフェアについての指針を参考にしていますので、興味のある方は読んでみてください。
次回は「きちんと管理された採卵養鶏場の卵を見分ける方法」についてお話しします。
お楽しみに!
コメント
コメントに反映された様子が無いので、再送になります。
ぽてっち様
貴ブログ、勉強になります。
ありがとうございます。
私は某動薬メーカーに営業職として30年ほど勤務して、早期退職独立、現在は主に家畜と養殖魚用のサプリメント を販売しております。
主にと書いたのには訳があって、人の健康にも情報提供をして行きたいと考えていて、多少の経済活動を行っているからです。
そして、その内容を充実させて行きたいと考えております。
具体的には、腸内フローラ移植研究会に参加をさせて頂いて、医師の方々との情報交換を通じて得た知識を元に、自宅で健康相談を行なっている事などが挙げられます。
所で、その移植研究会では、意外なほど畜産情報が重宝される場面が有ります。
馴致の話しは特に聞きたがれます。
移植研究会の先生方は謙虚な方々が多いので、良く質問もされます。
畜産に対する驚くべき誤解も有ります。
例の抗生物質漬けとか成長ホルモン剤使用とかですね。
誤解を解きつつ、感じて来て、だんだんと絵が見えて来た事が有ります。
それは、もしかすると人間よりも家畜の方が健康かも知れない、そしてその原因は油ではないか、また同時に家畜の馴致方法から判断して人は世代間の菌のやり取りが少なすぎているのではないか、そのを説明するのに成績の良い農場とそうでない農場を比較して物語風に仕上げれば良いのではないか、物語風に仕上げると一般の人々にも分かりやすいのでは無いか、そうする事で家畜を通じて人の健康に貢献出来るに違いない。と言う内容です。
すると、人々は家畜達のことを身近に感じるようになるでしょう。
畜産業に今よりは敬意を払うようになるでしょう。
家畜達は、食料として栄養面で人々に貢献するだけで無く、健康情報面でも貢献する事になります。
家畜の命を2度活かす。
家畜の有り難みを再認識ですね。
家畜達は人々に感謝されます。
世界の人々がアニマルウェルフェアと言うならば、先ず食べ物を粗末にしない所から始めるべきでしょう。
消費者や流通業者、料理人に、産業としての畜産業や家畜に愛着を持っていただく事で、食べ物を大切にする精神を醸成したいと考えています。
そんな事をボチボチ始めて書き始めている時に、貴ブログに辿り着きました。
私は、感染症関連には多少の知見が有りますが、飼料の事となると不明点が多くなります。
貴ブログは大変に勉強になります。
重ねてお礼を申し上げます。
ありがとうございます。
それから、お願いがございます。
ぽてっちさんが、知っている畜産家さんの愛すべきエピソードなどが有りましたら教えてくださいませ。
私の周りには懲りない面々がいらっしゃいますが、私の能力不足で、愛すべきエピソードに仕上げる事が出来ません。
どうぞ宜しくお願い申し上げます
遅くなりましたがコメントありがとうございます。
コメントは管理者の承認制になっているため、反映が遅くなりました。
申し訳ないです。
今後は承認不要にしようかなと思います。
農場の比較などは私も働いていた時によくしていました。
種豚や種鶏のメーカー主催のセミナーなどに積極的に参加すると様々な農家の方と交流することができますのでお勧めです。
飼料メーカーの人間も沢山参加していますが、目当ては農家との接点なので、
ほかの業者とはあまり話したがらないかもしれませんけどね(笑)
愛すべきエピソード…たくさんありすぎて難しいですね(笑)
そういえば、成績の良い農場の場長さんは観察力に優れていて、
動物のちょっとした変化にすぐ気づけるだけでなく周りの人に「髪切った?」とか「最近疲れてない?」とか
よく声をかけていました。
奥様ともずっと仲良しみたいですよ。
動物を飼うというのは、そういうマメさも必要なんだなと思いました。
あとはご自身で足を運んで色々とエピソードを仕上げてみてくださいね!
ケージ飼育の方が衛生的というのは少し違います。そもそも卵は厳格な基準に従って出荷するので、その過程で検査、洗浄、消毒され異常がある卵は売る前に弾かれますし、清潔に管理しないと汚いということはケージ飼育も平飼いも同じです。
次に鶏同士のケンカが起こりにくいと書いてますが、これはケージ飼育の一面しか見ていないから、言えることです。そもそも、ケージ飼育は鶏にとって、非常にストレスを受ける環境なのです。
身動きもまともに取れない非常に狭い環境の中で何もできずに、決められた時間に餌を食べて糞をして、卵を産むだけの機械となる。これを人間に置き換えて考えてみればどれだけ残酷なことかよくわかることができます。また、こういった環境で育つため、病気に対する耐性が低く、そうなると当然薬に頼るしかなくなります。もちろん、平飼いは薬を使わないとは言いませんが、ケージ飼いよりは少なくて済むことは多くの平飼い農場の方々の実体験によって証明されています。
名無し様
遅くなりましたがコメントありがとうございます。
清潔に管理しないと汚い、という点、まさにその通りだと思います。
実際にケージ飼育で驚くほど汚い農場も見てまいりましたが、そういった農場は大抵小規模農場が多いので、普段ケージ飼育の卵を食べている場合、そのような卵に遭遇する可能性は非常に低いのかな、とも思います。
(ただ、飼育方法に限らずちょっとテキトー過ぎませんか…という消毒方法の農場も見てしまったことが。。。とっても小さな農場なんですけどね。コッソリ)
またケージ飼育が平飼いよりもストレスが多いことも間違いありません。
私がお伝えしたかったのは、ケージ飼育は頑張らなくてもある程度の衛生管理ができてしまう一方で、平飼いの場合はかなりまめに管理を行わないとそれが保てない、ということです。
もちろん名無し様のおっしゃるように衛生的な平飼い農場があることも存じておりますし、そのような農場が今後増えていってほしいなと思っています。
平飼いの農場を全て貶める意図はありませんので悪しからず(誤解があるといけないので本文にて数か所追記を行いました)。
はじめまして。ブログが大変興味深い内容で、色々と参考になりました。
私は今年の7月から養鶏業を始めた者です。
平飼いで鶏肉用の地鶏を育てていますが、養鶏に関する情報を得るたびに引き継いだ養鶏場の状態がいかに劣悪なものかが分かってきて途方にくれているところです。(引き継ぐ前によく調べておけということだったのでしょうが、ちょっと事情がありまして・・・)
今後もブログチェックして勉強させていただきたいと思います!
ツイッターでもフォローさせていただきました。
はじめまして。
コメントありがとうございます!
ブログ読んでいただきありがとうございます:)
地鶏の飼育をされているんですね!
養鶏を始められたばかりで色々と大変だと思いますが、少しでも何かの参考になれば嬉しいです(^^)
嬉しいお言葉を色々とありがとうございます。
私もツイッターフォローさせていただきました!
畜産と全く関係ないことも書いていますが、もしよければ今後ともよろしくお願いいたします:)