こんにちは。ぽてっちです。
レストランなどのメニューで、時々「SPF豚」という言葉を見かけませんか?
私は、少し前に横浜のとんかつ屋さんで見かけました。
「SPF豚の厚切りとんかつ」
「SPF豚のしゃぶしゃぶ」
…なんか強そうな響きです。SFっぽい(笑)
でも、本当はSPFってどういう意味なんだろう?というと、きちんと理解している人はあまりいませんよね。
私も養豚に関わっていなかったら知らなかったと思います。
さてさて、今日はそんなSPF豚について、
- SPF豚とはどんな豚なのか?
- 普通の豚とは何が違うのか?
- SPF豚は美味しいのか?
などについて解説していきますよ~。
SPF豚とは?
SPFとは、Specific Pathogen Freeの略で、特定の病原菌を持っていないという意味です。
そしてSPF豚とは、日本SPF豚協会が定めた以下の7つの病原菌・病原生物を持っていない豚のことです。
- 萎縮性鼻炎
- 豚赤痢
- オーエスキー病
- トキソプラズマ感染症
- マイコプラズマ肺炎
- サルモネラ・ティフィリウム感染症
- 内・外部寄生虫感染症
4つ目のトキソプラズマ感染症とは寄生虫による感染症で、豚などの家畜やペットの猫にも感染し、人間に感染することがあります。
妊娠中の女性が感染すると胎児に影響が出ることもあり、注意が必要です。
上のそれ以外の病気については、感染していても人間に直接影響があるわけではありませんが、感染すると養豚場での生産効率が非常に悪くなってしまったり、豚肉が美味しくなくなってしまうことがあります。
なぜ美味しくなくなってしまうかと言うと、これは豚の身体が作られる時期と関係があります。
豚の骨、筋肉、内臓は生後約100日頃までにほとんど完成します。生まれたばかりの頃に病気にかかると、エサを十分に食べられず、骨や筋肉、内臓の発達が不十分になります。
そして病気が治ってから沢山エサを食べたとしても時既に遅しで、身体を作る時期は過ぎてしまっているので、ほとんど脂肪として体に蓄積してしまうのです。
日本SPF豚協会では、種豚(私たちが通常食べる豚を産むお母さん)の時点でこれらの病原菌をあらかじめ感染させないことにより、農場全体をクリーンに保ち、消費者に安全で美味しい豚肉を生産することを目指しているようです。
普通の豚と何が違うのか?
種豚の生産方法と飼育環境が違うようです。
SPF種豚の生産方法
種豚(しゅとん)とは、私たちが普段食べている豚を産むおかあさん豚です。
おかあさん豚のおかあさんを原種豚(げんしゅとん)、さらにそのおかあさんを原々種豚(げんげんしゅとん)と呼びます。
SPF豚の場合、原々種豚が産まれてくるときに産道や肛門の病原菌に触れないように帝王切開で子豚を取り出すそうです。
その後の世代は綺麗な環境を保って自然分娩で産ませます。
つまり、私たちが食べる豚のひいおばあちゃんが帝王切開で生まれてきて、それ以外のおばあちゃん、おかあさんは自然分娩ということになりますね。
SPF豚の飼育環境
SPF豚を飼育する養豚場は、通常の養豚場よりも衛生管理が厳しくなっています。
農場に出入りできる人は一部の人に限られますし、豚舎に入る人は直前にシャワーを浴びなければいけません。
また、豚肉を出荷するトラックや飼料を運ぶトラックも十分に消毒をしなければいけません。
ただ正直な話、こういった衛生管理は最近どこの養豚場でもやり始めたので、飼育環境についてはSPF豚とそれほど差はないかもしれません。
実際私もSPF認定でない養豚場へエサの営業に行っていましたが、毎回シャワーを浴びないと農場の事務所にさえ入れてもらえませんでしたからね。
SPF豚は無菌なの?
以前、「無菌豚」という言葉が出回ったようですが、無菌豚というものはこの世に存在しないと思います。
SPF豚はあくまで「特定の病原菌を持っていないことが保証されている豚」なので、上で挙げた病気以外の菌は持っている可能性が高いでしょう。
いやむしろ100%持っているでしょう。
大腸菌や乳酸菌などなど、その他腸内にいる様々な細菌は、一生無菌室で育てない限り取り除くのは不可能です。
そして仮に無菌室で豚を飼育したとすると、私たちでは到底手が出せないような値段(100g数万円でもおかしくない)になってしまうので、誰も飼育する人はいないでしょう。
SPF豚は美味しいの?
豚の健康に悪影響を与える病原菌が存在していないという意味では、生まれたての子豚が健康に育ち美味しいお肉ができる、という論理は正しいと思います。
ただ、病原菌以外にも豚肉に影響を与える要因はたくさんあるので、一概に美味しいとは言えないと思います。
たとえば、品種。
SPF豚に品種の指定はありません。
一般的にはLWDの三元豚が主流ですが、黒豚だったり、ハイブリッドかもしれません。
詳しくはこちらをご覧ください↓
豚の種類、品種について~いつも食べている豚肉ってどんな豚?~
また、きちんとお母さんの母乳を飲めたかどうかも大切です。
せっかく綺麗な環境で育っても、他の子豚たちに追いやられ、母乳を十分に飲めなかった子豚は発育不十分でお肉がまずくなってしまうので、農場の管理者がきちんと手をかけて育ててあげることが大切です。
まとめ
- SPF豚は特定の病気を持っていない豚のことである
- SPF豚は普通の豚よりも綺麗な環境で育てられている
- SPF豚は無菌ではなく、特定の菌以外の菌は持っている
- SPF豚だからといって必ずしもお肉が美味しいわけではない
ちなみに、SPF豚だろうが無菌豚(たぶん嘘)だろうが豚肉は絶対に生で食べないでくださいね!
寄生虫に感染したり、肝炎になる可能性があります。最悪の場合、死に至ることもありますよ。
家庭でもきちんと火を通してから食べましょうね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ではでは!
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